固定費削減の観点から、生命保険料の削減を検討する方も多いのではないでしょうか。
もんき~た家では、第1子の妊娠を機に、①生命保険不要派のパパと、②生命保険絶対必要派のママの仁義なき戦いが勃発。生命保険の要否を真剣に検討しました。今回はそのときの検討の過程を題材に、記事にしました。
あくまで、もんき~た家の例ですが、同じように生命保険に悩む方の検討の材料になれば幸いです。
①「死亡保険」と②「医療保険」の順に検討を行っていきますが、今回の記事では、①「死亡保険」について検討します。
もんき~た家の家族構成である、パパ34歳、ママ30歳、長女2歳、次女0歳をモデルに検討します。
現在 | ① | ② | ③ | ④ | |
パパ | 34歳 | 50歳 | 52歳 | 69歳 | 92歳 |
ママ | 30歳 | 46歳 | 48歳 | 65歳 | 88歳 |
長女 | 2歳 | 18歳 | 20歳 | 37歳 | 60歳 |
長女 | 0歳 | 16歳 | 18歳 | 35歳 | 58歳 |
この表は、また後で出てきます。
死亡保険の加入の要否をどうやって検討するか?
死亡保険は、被保険者が亡くなった場合に一定の金額が支給される私的な保険です。(周りの友人の話を聞くと、2000万~4000万円くらいの保険を掛けている人が多い印象ですね。)
一方で、家計の担い手が死亡した場合には、法制度による公的な保障制度が整備されています。
つまり、私的な死亡保険に加入しない場合でも、公的な保障制度により一定程度遺族の生活が保障されるんですね。
したがって、死亡保険に加入の要否を判断するに当たっては、
まず、①「公的な補償制度によって、どの程度遺族の生活が保障されているか」、
次に、②「公的な保障制度を含めた収入で、今後必要となる資金を賄うことができるか」
これらを検討すれば良いということになります。
パパが亡くなった場合、具体的にどれくらいお金を貰えるんだろう!
パパは、いわゆるサラリーマン。国民年金の加入者であると同時に、厚生年金の加入者でもあります。この2つの年金には、加入者が亡くなった場合に、残された遺族に支給される遺族年金の制度があります。
もんき~た家は共働きの世帯ですので、ママも会社から給与を受け取り家計を支えています。
したがって、ママの給与に受給できる遺族年金を加えた金額で問題なく生活ができるかどうかという視点が重要になります。
遺族厚生年金の額の試算
遺族厚生年金は、 厚生年金の加入者が死亡した場合に、その遺族に対して支給される年金です。亡くなった人の「厚生年金加入期間」や「在職中の給与」に応じて受給額が決まるのが原則です。
( 亡くなった人が将来受ける予定だった老齢厚生年金の4分の3が遺族厚生年金の金額)

そうなると、 もしかして 「厚生年金加入期間」が短く「在職中の給与」が低い若い人が亡くなった場合には、少額の給付した受けられないのかな?

そうしちゃうと、若い人が亡くなった場合の遺族の生活保障が不十分になるから、生活保障に十分な額になるように調整するような制度となっているんだよね。
しかし、 「厚生年金加入期間」 が短い若い人が亡くなった場合には、遺族厚生年金の額が少なくなり過ぎないよう、厚生年金加入期間が短かかったとしても、加入期間が300月(25年)であったとみなして遺族厚生年金の額を計算する制度となっています。
(例えば、22歳から厚生年金に加入して30歳で亡くなった場合でも、47歳まで掛金を払い込んだものとして取り扱ってあげる、そういう制度です。ありがたいですね。)
金額の計算は少し複雑ですので、下記リンクのオリックス生命の早見表を参考にします。
リンク先の表の「平均標準報酬月額」が、給与の水準を示す部分です。
この表は、後に説明する「遺族基礎年金」を含んだ金額となっているので、「遺族基礎年金」を受給できない「子供がいない妻」の「40歳未満の期間」の欄を見ると、遺族厚生年金単独の金額を確認することができます。
平均標準報酬月額 | 遺族厚生年金の額 |
25万円 | 年額400,792円 |
35万円 | 年額561,109円 |
45万円 | 年額721,426円 |
(オリックス生命保険の上記HPから引用して作成)
私は、自分が平均標準報酬月額が30万円程度だと仮定し、この2つの間を取って、年額約50万円と試算することにしました。
(参考)日本年金機構HP 遺族厚生年金
遺族基礎年金の額の試算
遺族基礎年金は、 国民年金の加入者が死亡した場合に、死亡した者に生活を維持されていた18歳までの子について支給される年金です。子供の生活を保障するための年金制度ですので、子供を養育している家庭のほとんどが対象となりますね。
遺族基礎年金の額の計算はシンプルで、次のような式で決まります。
780,100円+子の加算
そして、子の加算については、第2子までは1人当たり224,500円、第3子以降は1人当たり74,800円が加算されます。
遺族基礎年金の金額を、子供の数別に整理すると次の表のとおりです。
子供の数 | 基本年金額 | 子の加算 | 合計 |
1人 | 780,100円 | 224,500 円 | 1,004,600円 |
2人 | 780,100円 | 449,000円 | 1,229,100円 |
3人 | 780,100円 | 523,800円 | 1,303,900円 |
4人 | 780,100円 | 598,600円 | 1,378,700円 |
もんき~た家の、子供は2人なので、長女が18歳になる年度末まで(高校を卒業するまで)は、子2人分が加算されて年約123万、その後次女が18歳になる年度末までは、子1人分が加算されて年約100万が支給されることになりますね。
(参考)日本年金機構HP 遺族基礎年金
具体的な検討(ライフステージ別にどの程度の遺族年金が支給されるか?)
次の表は、遺族年金の支給額が切り替わるタイミングを整理した表です。この表の切り替わりに沿って、具体的な遺族年金の支給額を試算していきます。
現在 | ① | ② | ③ | ④ | |
パパ | 34歳 | 50歳 | 52歳 | 69歳 | 92歳 |
ママ | 30歳 | 46歳 | 48歳 | 65歳 | 88歳 |
長女 | 2歳 | 18歳 | 20歳 | 37歳 | 60歳 |
長女 | 0歳 | 16歳 | 18歳 | 35歳 | 58歳 |
検討1(①長女・次女18歳未満、②長女18歳以上・次女18歳未満)

上記の図は、これまでの話をイメージ化したものです。
①の期間は、【遺族厚生年金+遺族基礎年金(子2人分の加算)】 → 約173万円/年
②の期間は、【遺族厚生年金+遺族基礎年金(子1人分の加算)】 → 約150万円/年
①の期間は、ママの手取り額に約173万円が加わったものが世帯収入、②の期間は ママの手取り額に約150万円が加わったものが世帯収入になります。
月額にすると、①の期間は月額14.4万円、②の期間は月額12.5万円程度。これくらい世帯の収入を押し上げるということになりますね。
【ママの手取り25万円】→ ①の期間 39.4万円 ②の期間 37.5万
【ママの手取り30万円】→ ①の期間 44.4万円 ②の期間 42.5万
【ママの手取り35万円】→ ①の期間 49.4万円 ②の期間 47.5万
具体的な生活のイメージが少し付いてきましたね。
具体的な検討2(③長女・次女の高校卒業後、ママが本人の年金を受給するまで、④その後)

長女・次女が2人とも高校を卒業した後は、国民年金の遺族基礎年金が支給されなくなるので、ママに支給されるのは遺族厚生年金のみになります。
しかし、単純に遺族基礎年金が支給されなくなった分が家計の収支を悪化させるというわけではありません。
遺族厚生年金については、「中高齢寡婦加算」という加算制度があります。
(参考)日本年金機構HP 中高齢寡婦加算
中高齢寡婦加算は、次の2要件のどちらかに該当すれば支給されます。
①夫の死亡時に妻が40歳以上である。
②40歳の時に遺族基礎年金の支給対象となる子がいる。
モデルケースでは、②の要件に該当します。
中高齢寡婦加算の支給期間は40歳~65歳まで。しかし、遺族基礎年金を受給している間は支給が停止されています。
モデルケースのもんき~た家では、遺族基礎年金の支給がなくなるママ48歳~65歳未満までが中高齢寡婦加算の支給期間となります。
そして気になる額ですが、中高齢寡婦加算の額は、年額585,100円です。(約58万円)
(遺族基礎年金の3/4の額。780,100円×3/4≒585,100円)
つまり、ママが48歳~65歳までの間は、遺族厚生年金の50万+中高齢寡婦加算58万円=年額108万円 が支給されます。
したがって、③のママが48歳~65歳までの期間については、ママの手取り額に約108万円が加わった金額が世帯収入になりますね。(月額9.0万円)
④のママが65歳以降の期間については、遺族年金の支給はありません。
ママ本人の老齢厚生年金+老齢基礎年金の金額が世帯の収入となります。
(老齢厚生年金の金額は、保守的に平均の標準報酬額を30万円と仮定した目安額としました。老齢基礎年金は、定額780,100円)
※表の④は、日本人女性の平均寿命である88歳まで生きたという想定で作成しました。
【まとめ】
現在 | ~ | ① | ~ | ② | ~ | ③ | ~ | ④ | |
パパ | 34歳 | 50歳 | 52歳 | 69歳 | 92歳 | ||||
ママ | 30歳 | 46歳 | 48歳 | 65歳 | 88歳 | ||||
長女 | 2歳 | 18歳 | 20歳 | 37歳 | 60歳 | ||||
長女 | 0歳 | 16歳 | 18歳 | 35歳 | 58歳 | ||||
遺族厚生年金 | ◯ | ◯ | ◯ | ||||||
遺族基礎年金 | ◎ | ◯ | |||||||
中高齢寡婦加算 | ◯ | ||||||||
老齢厚生年金(ママ) | ◯ | ||||||||
老齢基礎年金(ママ) | ◯ |
総収入と総支出の見込みの見積もり
これまでの検討で、公的な保障制度である遺族年金によって、どれだけの金額が世帯に支給されるかの見込みがつきました。これを元に、総収入と総支出を見積もります。
試算した結果が
総収入>総支出 であれば、保険は不要であると考え、
総収入<総支出 であれば、その不足額が保険でケアする部分であると考えることにします。
総収入の試算
項目 | 積算 | 金額 |
公的年金 | 期間①(遺族厚生年金+遺族基礎年金)173万円×16年=2,768万円 期間②(遺族厚生年金+遺族基礎年金)150万円×2年=300万円 期間③(遺族厚生年金・中高齢寡婦加算)108万円×17年=1,836万円 期間④(妻の老齢厚生年金+老齢基礎年金)183万円×23年=4,209万円 | 9,113万円 |
ママの給与等 | 給与 400万円×35年=14,000万円 退職金 1,700万円 | 1億5,700万円 |
死亡退職金 | 死亡退職金 100万円 | 100万円 |
現在の貯蓄 | 現金預金+リスク資産 | 800万円 |
2億5,713万円 |
総額で、2億5,713万円になりました。この金額が、公的な社会保障制度を利用するのみで準備ができる金額ということになります。
ママの給与は実際にはもう少し高い水準の給与カーブを描くことになると思われますが、慎重に検討するため、保守的に見積もりました。
総支出の試算
項目 | 積算 | 金額 |
生活費 | 子供とママの生活費 22万円×12ヶ月×24年間=6,336万円 子独立後のママの生活費 18万円×12ヶ月×34年間=7,344万円 | 1億3,680円 |
住宅費 | 家賃 9万円×12ヶ月×58年間 | 6,264万円 |
子供の教育費 | 大学卒業までの学費 1200万円×2人=2,400万円 | 2,400万円 |
耐久消費財 | 車両購入費・諸経費 180万円(新車)×3回=540万円 諸経費(車検等) 20万円×29年 (2年に1度の車検=580万円 電化製品等 8万円×58年=464万円 | 1,584万円 |
葬儀代 | 葬儀費用一式 200万円 | 200万円 |
旅行・趣味・その他 | 10万×58年 | 580万円 |
2億4,708万円 |
総額で、2億4,708万円になりました。
支出については、各項目とも想定よりも少し多めに見込んだ金額で積算し、試算しています。
学費については、小学校~高校までが公立、大学が私立の場合を想定しています。
(県外に進学する場合には、仕送り額を見込む必要がありますが、試算からは除いています。見込み額は、10万円×12ヶ月×4年×2人で840万円程度)
死亡保険の加入すべきか否かの結論
総収入見込額 2億5,713万円 > 総支出見込額 2億4,708万円 という結果になりました。
総収入見込額が総支出見込額を上回る結果となっているため、私的な死亡保険に加入しなくても、既に生活に必要な資金は確保されていると考えられるので、死亡保険は不要であると判断しました。
したがって、少なくともパパは、死亡保険については全く入る必要がないと考えていました。
しかし、生命保険絶対必要派のママは、理屈では死亡保険が不要だと言うのが分かったような気がするけれども、「周りの友人達が死亡保険に加入する中、自分たちだけが保険に入らないのは不安…」という気持ちが拭い切れないようでした。
そこで、ママに気持ちも考慮して、 パパ・ママの職場を通じて加入できる、死亡保険金が800万円~1000万、月額800円~1000円程度の掛金で掛け捨ての死亡保険に、パパ、ママそれぞれで加入することにしました。
例年払い込んだ掛金の50%程度が余剰金として戻ってきているようでしたので、実質負担は月額400円~500円程度(夫婦で800円~1000円程度)に収まるため、この程度であれば許容範囲ではないかという判断です。宝くじを買っているような気持ちですね(笑)
感想
生命保険については、保障を手厚くすればするほど安心感を得ることができますが、その分家計の収支を悪化させていきます。
「もしものとき」を、大きく捉え過ぎて恐れすぎることも、小さく捉え過ぎて慢心することも、いずれも適切ではないように思います。
今回、具体的に検討をしてみて、「もしものとき」の具体的な輪郭を掴むことができたのではないでしょうか。

今回の記事を読んでみて、ぽめ子はどんな感想を持ったかな?

死亡保険がなくてもちゃんと生活が保障されている部分が多くて、「日本の社会保障制度、結構やるじゃん」って思ったわ。
でも、この制度がこの後もちゃんと続いていくかしら?

確かにそうだね。今度、保障水準が少しずつ切り下げられて行くこともあるかもしれないね。
けれど、制度の大枠は変わらないし、保障水準が急に変わるということもないと思うから、制度変更に応じて生活スタイル(住まい方・支出内容等)を見直して、家計を対応させていけば十分なんじゃないかな。

そうね。ライフプランについては、随時チェック&見直しが重要ね!
次回は、②医療保険編の記事を作成します^^
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